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【はじめて訪れた奄美・加計呂麻島の思い出と、きび酢を製造する中田さんご夫婦との出会い】

サイトの管理人である私は、2015年3月に鹿児島〜台湾まで船旅をする途中の加計呂麻島で、タイケイ製糖を営む中田さんご夫妻に出会いました。

「はじめて奄美に来たのだから、奄美らしいものを見学しよう」と前夜に思い立ち、黒糖工場の見学目当てで奄美大島の南端・古仁屋から加計呂麻島に渡りました。

3月の奄美は寒く、小雨が降る中、目指す製糖場は船着場から歩いて行くには思いのほか距離と起伏があり、1度諦めて港に戻りました。そもそも「行ってみて営業していれば見学可」という見学のスタイルだったため、工場に辿り着くことができても見学できない可能性があったことも大きな理由のひとつです。

帰りの切符を買おうとすると、券売所のおばさんから「もう帰るの?」と声をかけられました。地元の顔ではないことがわかったのでしょう、さっきの便で来たばかりの観光客だと瞬時に察知されていたのだと思います。

事情を話すと「せっかく来たんだから、見て行きなさいよ。」と言われ、再び製糖場を目指して歩くことに。道中は時節柄、たまにすれ違う車のほとんどが工事関係の車両でした。

そんな中、たまたま通りすがった一般車両を運転するおばさんに声をかけられて、目指す製糖場の近くまで車に乗せていただけることになりました。道中は山がちで、とても歩いていける道のりではありませんでした。平野育ちの私には、地図を見ただけでは想像が及ばないことでした。
目的地近くで車を降ろしてもらい、製糖場へ向かいました。その道のりに小さな小屋があり、煙が出ているのを確認しました。

どうやら中には人がいて、何か作業をしている様子でした。その小屋を脇目に工場まで歩きましたが、その日は操業していない様子でした。

諦めて帰る途中に再び小屋の前を通ると、開きっぱなしの小屋の扉から中の人と目が会いました。ちょうどサトウキビの搾汁を煮詰める作業をしている中田さんご夫妻でした。はじめは気づきませんでしたが、私が見たかった製糖作業を行なっていたのでした。

軽く挨拶をして、なぜここにいるのか?などを話すと、中田さんご夫妻は、私を暖かく迎え入れてくださいました。

サトウキビの絞りかすで火を起こし、ひたすら搾汁を煮詰める作業は重労働で、手が離せない作業です(サトウキビの栽培や刈り入れ、搾汁まで考えると、製糖業への畏敬の念が湧きました・・・)。

そんな忙しい中、定年退職後に幼い頃を過ごした加計呂麻の空き地でサトウキビ栽培を始めたこと、在来種である「太茎(タイケイ)種」にこだわて栽培していること、パッケージは姪御さんが作ってくれたことなどを聞かせていただきました。

途中途中で煮汁やできたてほやほやの暖かくて柔らかい黒糖の試食もいただきつつ。できたての黒糖は口の中でほろっととろけて、美味しすぎてびっくりしました。

「お土産に購入して行きたい」と言うと、在庫は古仁屋にあるため、夕方再び古仁屋で会いましょう、と言うお話になりました。ですがその日はすれ違いで会えぬまま、旅行から帰った後、福岡の自宅(当時)に届けてもらいました。

見学させていただいたのは、火を焚いてサトウキビの搾汁を煮詰める工程と、煮詰めた後の加工のみでしたが、とんでもない重労働でした。

さらに、サトウキビ畑の草刈りや刈り取り、サトウキビ絞り、出来上がった黒糖の運搬、夏の暑い気候の中での野良仕事、台風の影響などなど・・・想像を巡らせると、途方に暮れてしまうような手間と労力がかかっています。

そんな風景を思い浮かべながら送られてきた黒糖を味わいました。食べることにはこんなに集中力とエネルギーがかかる体験をしたのは、恥ずかしながらこの時が初めてでした。

そのことをきっかけに、その後もごくごくたまに連絡を取るようになりました。

また、旅行後に福岡でたまたま奄美出身者のコミュニティと関わるようになったこともあり、2016年、2017年と奄美を旅行する機会ができました。その度に、少しですが中田さんの元に手伝いに行くようにしていました。

2015年の時点でタイケイ製糖の『黒糖』を販売する卸先は名瀬に3件のみと聞いていましたが、2016年に訪れた際には古仁屋でも見かけるようになり、2017年には完売のため在庫がないと聞き、黒糖が買えなかったことは残念ですが、それ以上に嬉しく思いました。

それと同時に、3年かかって仕込んだ『きび酢』が新たに商品に加わっており、「きび酢の販売を手伝ってくれないか?」と相談されたことが、このサイトのはじまりです。

以前から、地方での暮らしや特産品にスポットライトが当たり、”地のもの”がオシャレで可愛くパッケージング(コンテンツ化)されて、都会の書店や百貨店などで消費の対象となっている様子に、ムズムズする感覚を覚えていました。

それは多分、「オーガニック」やら「サスティナブル」やらを実践せずとも、そうしている人たちや、そうした人たちが作ったものを尊敬しているからだと思います。

私は、姪御さんが作成したパッケージに包まれた、中田さんご夫婦が作りあげたきび酢を、心から応援しています。

2017月11月